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二人の子どもも、もうすぐ生まれる。
今日は出産予定日で俺は病院にいた。
立ち合いなどという重責を負うのは無理なので、廊下で出産を待つ。
「生まれましたよ」
超安産のスピード出産で、元気な女の子が生まれた。
看護師に抱かれた自分の子と分娩室の外で初対面。
生まれたての赤子は、真っ赤でしわくちゃで目も見えない。
自分の子だという実感はなかなか湧かなかったが、数日も立つと目を開けて、しっかりとこちらを見るので楽しくなった。
病室で、名前について嫁と話し合った。
「どんな名前が似合うかなあ」
赤子の顔を見ながら考えていると、俺の顔を見てニタアと笑った。
その笑い方が、アヤナとそっくりだったので度肝を抜かれた。
「お前、まさか……」
赤子は、ニヤニヤしている。
「いや、まさかなあ……」
必死に否定したが、嫁が「アヤナちゃんってどう?」と、言ってきたのでまた驚いた。
「どうして?」
「ピンときたの。あなたのデビュー作の主人公の名前じゃない。縁起がいいでしょ?」
「あれ、幽霊だぞ」
「そんな幽霊と同居して本まで書いて、関係ないというの?」
嫁には、自分の能力とアヤナのことを話していた。
変なことを言う男と結婚するのだから、大した女なんだ。
それも魅力の一つ。
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