1.幽霊少女のお願い

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 ネットの求人板で見つけた片づけ屋の面接に行ったとき、代表の草野が俺にこう言った。 「誰でもできる簡単な仕事だ。だけど、私は人を選ぶ。それは、この仕事は信用第一だからだ」  俺は、黙って聞いた。 「君は、澄んだ目をしている。経歴も汚れていない」 「はあ……」  澄んだ目をしているなんて今まで言われたことがなかった。  どれだけ濁った目と汚れた経歴書を見てきたんだろうか。 「仕事をする上で、これだけは守ること。ゴミ一つでも個人で持ち出してはいけない。仕事で見聞きしたことは、決して外に漏らさない。いいね?」  そんなに難しいことじゃない。  俺は簡単に承諾した。 「分かりました」 「じゃ、採用。明日から来てくれ」  楽な仕事をゲットしたと、このときの俺は、とても気楽に考えていた。  俺は二十歳のフリーター、勝目正直(かつめまさなお)。  申し込んだバイトは『有限会社ハッピークリーン』という片づけ屋で、草野という50歳くらいの代表が一人でやっていた。  多分、採用してもすぐ辞めてしまうか、あるいは、手癖の悪い奴が多くてクビにしてきたのだろう。
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