4.人の恨みに要注意

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 お盆だ。  俺はお盆が嫌いだ。  なぜなら、この時期は地獄の釜の蓋が開いて亡者が現世に戻ってくるからだ。  つまり、普段の何倍も幽霊を視る機会が増えるということだ。  お盆の時期はバイトも休みのはずなのだが、緊急の仕事が入ったということで草野に駆り出された。  草野と俺、プラス、背中のアヤナと、片づけ先にトラックで向かった。 「今度はどんな家ですか?」 「同棲カップルが住んでたマンション」 「じゃあ、依頼人はそのカップル?」 「いや、女の方のお姉さん……」 「住んでいた本人たちは? 勝手に荷物を触っていいんですか?」 「妹は事故で亡くなった。男は失踪。マンション名義は妹。それで、解約するために片づけたいとのことだ」 「どうして亡くなったんですな?」 「料理中に全身火傷(やけど)で亡くなったらしい」  つまり、死亡現場を片付けるということ。  これは、99%の確率で幽霊が出る。  残りの1%は、事故死なら成仏できているかもしれないという淡い期待による。  アヤナがささやいた。 「今日は、お盆だ」 (ああ、そうだ……)  お盆中は、成仏した霊も戻ってくる。  もし実家に戻ったとしても、お姉さんに憑いてくることも考えられる。  出現率は100%だ。
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