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お盆だ。
俺はお盆が嫌いだ。
なぜなら、この時期は地獄の釜の蓋が開いて亡者が現世に戻ってくるからだ。
つまり、普段の何倍も幽霊を視る機会が増えるということだ。
お盆の時期はバイトも休みのはずなのだが、緊急の仕事が入ったということで草野に駆り出された。
草野と俺、プラス、背中のアヤナと、片づけ先にトラックで向かった。
「今度はどんな家ですか?」
「同棲カップルが住んでたマンション」
「じゃあ、依頼人はそのカップル?」
「いや、女の方のお姉さん……」
「住んでいた本人たちは? 勝手に荷物を触っていいんですか?」
「妹は事故で亡くなった。男は失踪。マンション名義は妹。それで、解約するために片づけたいとのことだ」
「どうして亡くなったんですな?」
「料理中に全身火傷で亡くなったらしい」
つまり、死亡現場を片付けるということ。
これは、99%の確率で幽霊が出る。
残りの1%は、事故死なら成仏できているかもしれないという淡い期待による。
アヤナがささやいた。
「今日は、お盆だ」
(ああ、そうだ……)
お盆中は、成仏した霊も戻ってくる。
もし実家に戻ったとしても、お姉さんに憑いてくることも考えられる。
出現率は100%だ。
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