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「奈美さん、申し訳ないけど、真実がわかっても、俺からは何も言えません」
「いいです。私、自分で復讐します」
「復讐?」
さらに物騒な話になってきた。
「怨霊となって、彼氏を呪い殺すつもり?」
「いいえ。私、二人の子どもに生まれ変わる。そして、肇の一族を全員食い殺してやる」
怒りの矛先は、彼氏だけに収まらなくなったようだ。
「肇がいなくなった理由がわかってスッキリした。新たな目的もできたし、私、これで成仏します。手伝ってくれてありがとう」
恐ろしくも悲しい笑顔を浮かべたまま、奈美は空に上がっていった。
一応、成仏はしたようだ。
「アヤナ、彼女の怒りもわかるだけに、俺には復讐を止められないよ」
「人の恨みが一番怖い」
「そうだな」
草野がやってきた。
「帰るぞ」
「はい」
摩美がきて、「これ、後で食べて」と、手作りのクッキーをくれた。
摩美さんの笑顔が、今日一番の救いとなった。
妹は殺されたのかもしれないなんて、知ったところで恨みの連鎖が始まるだけ。
お姉さんにはずっと笑顔でいて欲しいから、何も伝えずにマンションを後にした。
アヤナが俺の背中で、「彼氏は自業自得。こういうこともある。気に病むな」と、落ち込む俺の気が済むまで慰めてくれるのだった。
―― 終わり
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