1.幽霊少女のお願い

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 位牌が出てきたのには、さすがに吃驚した。 「位牌はゴミじゃないですよね」 「そういうものは、住民の相続人に渡すことになるけど、黄色い袋じゃあれか……」 「相続人がいるんですか」  その人が片づければいいのに……、って、それじゃ商売にならないか。  さすがに位牌を黄色い袋に放り込むのは気が引けたので、草野がトラックに手で運んだ。  長屋の間取りは2DK。  台所が終わると、寝室に入った。  草野は隣の居間を片付けている。  寝室には洋服やカバンがぐちゃぐちゃに積んである。 「服が多いなあ」  これも片っ端からゴミ袋に放り込むのだが、ここでようやく亡くなった住民が女性であることが分かった。  女性の服。  女性の下着。  どれも、畳まれもせず洗濯もいつしたのか分からない着古し。  特に興奮するような代物はない。  たまったゴミ袋を外に出すときに草野に聞いた。 「住民は女の人だったんですね」 「住民のことは詮索するな」 「はい……」  見ざる聞かざる言わざる。  それがこの仕事を続ける極意なのだろうか。
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