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「あの……。そこを片付けていいですか?」
一応、許可を取ろうと思った。
できれば、このまま消えてくれると助かるのだが。
「……」
虚ろな目がゆっくりと俺を見るから、ますます背筋が寒くなる。
「あのー、何かこの世に心残りでもありますか?」
「……」
「難しいことはできないけど、簡単なことなら手伝いますよ」
俺は、霊を追っ払うのは好きではない。
追い払われた霊は消えるわけではなく、未練がある限りまた戻ってくるからだ。
中には、話を聞いてもらえただけで満足して成仏する霊もいる。
この少女もそうだといいなと思って聞いてみただけだ。
「……ワ……タ……シ……テ」
「私て?」
「……ワタシテ……」
「渡して? 誰かに渡したいの?」
「……ワタシタイ……」
「何を渡したいの?」
「……ユ……ビ……ワ……」
「指輪? どの指輪?」
「……」
「この部屋にある?」
少女はコクリと頷いた。
「そうか……。指輪がこの中に……」
目の前にはゴミの山。
果たして、見つかるのだろうか?
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