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他の皆は大丈夫だろうか。
聞こえてくる行き交う足音とドアを乱暴に開く音、時折耳に届く悲鳴に、メリッサは部屋の前に残してきてしまった護衛や隣室にいたはずのメイドたちのことを思った。
部屋に姿を見せなかったことからして、おそらくはメイドたちももう一人の護衛も薬を盛られて眠っているのだとは思う。
(……眠っている方が安全だとは言っていたけど)
海賊の一味である少女が言っていたことだから、一つの事実ではあるのだろう。
大人しく眠っている者をあえて手に掛ける必要もない、というのであれば一応納得のいく話でもある。
であれば、護衛に関してはある程度の安全は確保されているとも言える。
けれどもそれは護衛が男であって、護衛という立場からしても人質にとり身の代金をとる相手としては適当とは言えない相手だから。
メイドたちになるとまた話は変わるように思うのだ。
(私、いいのかしら)
メリッサは主人だ。
主人である以上、責任はある。
なのにメリッサ一人が隠れて、メイドたちは部屋に残したまま。
(でも私がここで部屋に戻っても余計に事態を悪化させかねないのよね)
自身の身の安全を第一に確保することも主人の義務の一つ。
少なくとも貴族である以上はそうであるべきなのは、一応は貴族の令嬢であったメリッサが教えられたことの一つであって。
そもそもここから出て海賊に見つかることなく部屋までたどり着けるだろうか。
メイドたちの安全を確認する前に自分が捕まる未来がまざまざと脳裏に浮かんできてしまう。
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