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そっと開いたドアはけれどもすぐにガタッ!と音を立てて止まった。
開いた隙間はようやく顔が覗かせられるほど。
メリッサは恐る恐る開いた隙間から顔を外に出して、上げそうになった叫び声を飲み込んだ。
「大丈夫?いったいどうし……」
「部屋の中にいて下さい」
問いかけたメリッサの言葉を遮ったのは、護衛の一人。帝国の元軍人だという男で退役した後に今回のような護衛の仕事をしている男だった。
この旅のために公爵家が雇ったのは二人。
二人とも退役軍人で年嵩ではあるが戦闘にも護衛にも慣れた者たちだ。
それが今はドアにもたれて座り込んでいる。
男の全身に視線を走らせてみるが、特に怪我をしている様子はない。
着ている服が乱れている様子もないし、床に血溜まりができていることもない。
だがその顔色は蒼白で額には汗が浮かんでいた。
メリッサはすぐに、
(……毒?)
と、疑って男に手を伸ばした。
ダラリと垂れ下がった手を取り、手首の脈を取る。
(……少し弱い。けどひどく乱れてまではない)
震えもない。
視線は朦朧としている様子だが、呼吸は比較的しっかりしている
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