1306人が本棚に入れています
本棚に追加
/26ページ
致死性の毒物ではないように思う。
「……薬を、盛られたようです。おそらく、眠り薬の類を」
緩慢な口調で男が言うのにメリッサは小さく頷いた。
「他の皆は?どうしているかわかりますか?」
メリッサ自身は船酔いをしたような感覚はあるが、意識事態は先ほどまでよりずっとはっきりしている。
メリッサはおそらくが盛られたという薬を口にしていないということだろう。
夕食か、あるいはメリッサが部屋にこもった後に出されたお茶や水に入れられていたということか。
「様子がおかしかったのは目につく限り全員です。我々だけでなく、おそらく客のすべてと少なくとも大多数の船員……っ!」
男の言葉が止まる。
メリッサもまた言葉を止めた男の視線の先を追って「あなた……」と小さく口の中で驚愕の声を上げた。
目立つ赤毛の髪を首の後ろで無造作に紐で括った少女が周りを伺うようにしながら甲板からの階段を降りてきたところだった。
最初のコメントを投稿しよう!