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昼間と同じ白いシャツにズボンにブーツ。
違うのは紐で括られた髪と腰に吊されたナイフと湾曲したサーベル。
髪と同じ赤の布を柄に巻かれたサーベルに、護衛である男は警戒心を剥き出しにして座り込んだ状態のまま腰の剣に手を伸ばした。
「奥様、部屋の中に入ってドアにカギを閉めて下さい。--あれは海賊です」
「……海賊?」
では、先ほどの何かがぶつかったような音は。
頭上から聞こえてくる足音と喧騒は船に海賊が乗り込んできたものなのか。
「飲み水に薬を盛って仲間を呼び込んだんでしょう」
掠れた声で男が言うのに、メリッサは息を飲んでぶらぶらと軽い足取りで近づいてくる少女を見つめる。
(あんな、若い少女が?)
「奥様!」
ドン!とドアを肘で叩かれて、メリッサは我に返り言われた通りドアを閉めようとして、「待った」という少女の声と両手を上げた仕草に手を止めた。
「そんなに必死でドアを守ってたらいかにもすごーく大事なものがありますよーって宣言してるようなもんだよ。カギなんて掛けてもムダだしね」
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