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階段を上りきると、少女は物陰に身を隠しながら狭いおそらくは船員が出入りするのだろう入口に足を向ける。
入口を入ってすぐに、少女はメリッサを振り返った。
「ここ、入って」
そう言って少女が指したのは細長い、人間が一人立ったまま入るのがやっとだろう用具入れ。
キィ、と音を立てて開いた鉄製のドアの奥には箒やモップ、それにいくつもの重ねられた木桶が詰め込まれていた。
「入ってって言われても……」
とてもメリッサが入る隙間はない。
「……ちっ」
少女は舌打ちすると、乱暴な所作で木桶の塊を脇に出すと、メリッサを中に押し入れた。
「……ちょっ、ちょっと!」
無理やり押し込まれて抗議の声を上げるも黙殺される。ドアを閉められると視界は闇に閉ざされ、途端にそれまでは混乱に紛れていた不安が頭をもたげた。
「ね、ねえ!」
何を言うべきか、それとも問うべきか、わからないながらもとにかく口を開く。
ただ単に少女がまだすぐそばにいることを確認したかったのかも知れなかった。
けれどもそのメリッサの声は、ガンとドアを打ち付ける音に遮られる。
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