初めての海と、海賊?

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クロイスの妻としてヘルトバルトの公爵家の女主人となったメリッサではあったが、邸のことは優秀な家礼とメイド頭が執り行いメリッサのすることといえば稀にあるご婦人方のお茶会へのお誘いの出席と結婚後も続いている帝国のマナーや文化、そして魔女の魔法の勉強くらいで、ともすれば2日3日何もやることがなく本を見たりして時間を潰す日々だった。 そこでメリッサはクロイスに手紙で許可を得ると身分を隠して街の診療所へ手伝いに出ることにした。 貴族の妻としては決して誉められた行いとはいえないけれど、正直広すぎる邸でただクロイスの帰りを待つよりもメリッサにとっては非常に充実した時間の過ごし方である。 このようなことが認められたのは、帝国の気風もあってのこと。 もともと虐げられた魔女たちが寄り集まりやがて受け入れるために作られた帝国という国はある意味自由すぎる気風を持っていた。 つまるところ同じような貴族の奥方が少なからずいるということである。 ある上位貴族のご婦人は料理が得意でこっそり街で食堂を営んでいるという。 週に一度は自身が厨房に立ち腕を振るっているとか。 メリッサの故国である王国では考えられないことだけれど、帝国はまだ建国も浅く、貴族といってもそれらは主に戦争や内政で貢献した平民に与えられた地位。もともと生まれ持った貴族というのがほとんどいないことから、このようなことが有り得るのだろう。 そもそも皇族ですら僅か数十年前までは他国の平民でしかなかったのだから。
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