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地蔵菩薩とは、子どもの守護尊で、親より先に逝き、賽の河原で獄卒に責められる子どもらをお救いくださると信仰されている仏様だそうだ。
まさとの頼みを受けようかどうしようか迷っているさなか、俺は彼女からある相談を受けた。
俺はその相談から逃れるように、関西方面の就活活動の口実に、あゆむと一緒に彼の故郷へ向かったのだ。
「あゆむ、そろそろ起きろ」
どうやら何時の間にか、俺も寝ていたらしい。
空が朱色から濃い紺色に代わり始め、御堂周辺に飾られた行灯に、明かりが点り出していた。
まだぼんやりする頭のまま、麦茶を貰いに行くと、甚平姿の小さな子どもが一人、ふらりと公民館に入ってきた。
ようやく歩けるようになったくらいの幼い子ども。これくらいの年頃だったら、親御さんが側についているはずなのだが、その親御さんはどこだろう。
俺は首をひねりながら、その子どもを公民館の中に招き入れた。ここにいたら、きっと親御さんが見つけてくれるだろう。
やがて、次々に子どもらが色とりどりの甚平と浴衣姿でやって来て、広場や公民館内で遊びだした。
その子どもの親御さんたちが、子どもたちの目の届く場所で談笑している。
「おーい、学生さん、手伝い頼むわ」
俺は頼まれるままに、焼き鳥や、焼きそば作りに加わった。
あの子どもは、どうしたのだろう。
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