きっと、大丈夫だから・・・・・・!

2/9
前へ
/9ページ
次へ
 大病院の出入り口の自動ドアが開き1人の少女が入ってきた。精悍な顔を持つ彼女は背が高く長い髪の後ろ側を紐で結っていた。服は私服で半袖のジャケットにミニスカートを履いている。右手の指には何かが入っているであろうコンビニのビニール袋を引っ掛けていた。少女はロビーの間を通り受付の前で足を止めると 「すみません。お伺いしたい事があるんですが?」  少し温和な表情で問いかける。受付の窓口に座っていた看護師も似たような表情を合わせ 「はい、何でしょう?」  と優しい笑顔で聞き返した。 「ここに入院している友達に面会をしに来たんですが。場所がどこか分からなくて。」 「あら、面会にいらしたなんて友達思いの方なんですね。しかもお見舞い品まで持ってきてくれて、きっとその子も喜びますよ。」  褒められた少女は照れた顔を逸らし無意識に髪を撫で下ろした。 「患者さんのお名前は?」 「千歳雪音っていいます。」  看護師は2回頷くと入院患者のリストを開いて名前を検索した。 「千歳雪音さん・・・・・・ああ、その子なら3階にいますね。部屋は304号室です。エレベーターはあちらです。」  少女は看護師にお礼を言うと近くにあったエレベーターに乗り込み3階行きのボタンを押した。閉ざされたエレベーターは途中で止まることなく上の階に上がっていった。  3階に到着すると少女はエレベーターから降り304号室まで続く長い廊下を歩いて行く。すると途中で車椅子に座っていた老人の患者が困った様子で廊下の真ん中で止まっていた。よく見ると地面に落としてしまった届かない手で折鶴を拾おうとしている。少女は代わりに折鶴を拾うとそれを老人の手に差し出した。 「ありがとう、お嬢ちゃん。最近の若者はこういう気遣いはしてくれんからのう・・・・・・」 「どういたしまして。」  少女は笑顔でそれだけ言うとと老人を背に再び足を進めた。やがて探していた304号室に着き病室の札を確認すると扉をノックした。 「どうぞ・・・・・・」  静かな扉の向こうから弱々しい少女の声がした。扉を開け中に入ると部屋の中で雪音は顔を青くしてベッドに横たわっていた。老婆のよう白い髪、古そうな患者服、左手には注射針の跡。とてもじゃないが今にも意識をなくし倒れてしまいそうな様子だった。
/9ページ

最初のコメントを投稿しよう!

14人が本棚に入れています
本棚に追加