ゆきのちゃんのほっぺ

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 ゆきのちゃんのほっぺのキャラクターなのだから、ゆきのちゃんだと呼ばれているだけである。雪乃がこの店でアルバイトをしているのも、自分と同じ名前のお菓子かぁと求人情報誌を見て飛びつき、アルバイトスタッフの座を勝ち得たのである。  文吉社長も、雪乃ちゃんでゆきのちゃんのほっぺかいいねと。不思議なノリで直ぐに採用を頂いたのは、入学した春だった。 「ゆきのちゃんのほっぺ喰いたいんだってさ。うちの親父」  恥ずかしそうに、鷲尾は店に入っていく。寒いから入ろうと、ユイカと雪乃も続くように店に入る。  鷲尾の親が食べたいと言うように、絶大な人気を持っている。雪乃自身、つい先日も母親に五箱のほっぺを送ったばかりである。  迷わずに、選びレジに並ぶ姿を入り口付近で見ていると、社長文吉が声をかける。 「あのラガーマン、友達か」 「同じ大学の友達です」  おおい、そのデカいの三浦の友達だと叫ぶ。  店内の視線が集まる事は得意では無い、人に見られる事が好きでは無いのだが、社長文吉は、さも当たり前のように大きな声で、おまけしてやれと叫ぶのだった。  仕事中は三浦雪乃とフルネームで呼ぶが、三浦と呼んだのは、優しさなのだろう。 「そうだ、三浦雪乃。お前の事、探しに来た男がいたぞ。あのラガーマンより随分小さい男の子だったな。いつバイトしてるのかとか、彼氏は居るのかとか、聞いてたが、心当たり有るか」  スマートフォンを開き一枚の写真を見せる。 「この子ですか」     
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