ゆきのちゃんのほっぺ

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 小説を読む、田中虎次。  小さい男の子で、思いつくのが彼だと言う事に申し訳なさを覚える。 「違うと思う。もっと影を残す奴だったな。根暗男だな。随分真剣に聞いてきたからてっきり友人かと思ったが、そうか、知らないか。はてでは、あやつは誰だったのか」  ラガーマンが戻ってきたな。また明日おいで。 「誰だラガーマンって」  訝しげに、大きな紙袋を持つ鷲尾と合流し店を出る。 「正月に里帰りした時、これ持っていったら、ハマったらしくてよぉ。金出すから送れって言われたんだよ。これ酒に合うらしいぜ」 「でも、うちの店郵送出来るのに。他で送るの」 「いや、送ってもらった。これ、あの爺さんの所為で全部サービス。今日のつまみはゆきのちゃんのほっぺだな」  気前よく、大盤振る舞いしたものだと感心してしまう。 「あの様子から思うにあのお爺ちゃん、ストーカーに雪乃のシフト多分ばらしたね」  ユイカが呆れるのも、無理は無い。あんな性格だから、店があそこまで大きくなったのだろうとは思うけれど、これからは友達と一緒に店に入るのは辞めた方がいいだろう。  店が潰れてしまう。 「どうしよう。シフト教えたなら明日店に来るかも知れない」     
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