25人が本棚に入れています
本棚に追加
/59ページ
平手瓶太にとって、人生は退屈な物だった。
賢いが故の退屈では無く、あまり報われた事がない為の退屈である。あまりと言える様に全く報われない人生だとは思っていないが、やってもやらなくても大きく変わらないのであれば頑張る必要なんてあるのかと思ってしまったからである。
思えばいつから、そうなったのかは分からないが、大好きな三浦雪乃と話すことが出来なかったからと言う事も可能性には上がる。
好きだからと言って一緒になれるわけでは無い、一方通行の想いは何にもならない、恋愛とは言えないが大好きだった。
一緒に居たいと思っていた。
それが、その三浦雪乃が瓶太の目の前に居るのだ。
何て声をかけたらいいのだろう。今日は虎次君と呼ぶ男とは一緒に居ないんだなぁ。そうかアルバイト先に向かっているのか、と三浦雪乃と話す事だけが、瓶太の退屈を破壊する唯一の原動力である。今更ではあるが、ずっと逢いたかった。
今更遅いのかも知れないと思うと、いつも彼女に声をかけられずにいた。今もこうして、文吉へと入り、仕事をする彼女の後姿を見るのがやっとなのだから。
「おい、お前何やってんだ」
最初のコメントを投稿しよう!