ゆきのちゃんのほっぺ

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「直ぐに、母さんも僕に気が付いてくれてさ。離婚してから十年数ぶりに抱きしめられたときは何だか変な気分だった。やっぱり一人は寂しかったのかな。僕に今度は秋田に住めばって進めてきた位だよ」 「それにしても、姉ちゃんが僕らに逢いたくて仙台の学校に居たとは、もっと早ければ親父にだって遭えたんだぜ」  その日は、親父と母さんが分かれてから、どうしていたかとか沢山話をしたのだと、瓶太は寂しそうに語る。 「それで、姉ちゃんのが仙台で大学生をしている事を聞いたから、探しに行くって言ったら、カメラくれてさ。雪乃の大学生活をこっそり私も知りたいから写真撮って来てよって。まぁ、バッテリー切れて電気屋で買う羽目になるし、あらぬ誤解が増えるし、このカメラが元凶か」  数枚の隠し撮りを見せる。  ほとんど後ろからの写真で、誰か辛うじて分かる無骨な写真。 「ちょうど、僕が仙台行こうとした日に、ゆきのちゃんのほっぺが届いてさ。五箱は多いから二つあげるって食べながら新幹線に乗って、そのままストーカーになったみたい。僕としては探偵な気分だったんだけどね」  この写真レベルでは探偵にもストーカーにも慣れないだろうと鷲尾が笑う。 「そうしたら、ほら何でだか友人であるはずの彼女が姉ちゃんの家の周りに足跡つけてるんだもん。一応写真も撮ったよ。探偵気分だったから」  気まずそうに、ユイカは声をあげる。     
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