ゆきのちゃんのほっぺ

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 探している途中、雪乃ちゃんからメール来てさ。急いで逃げたから片付けてなかったんだ。直ぐに言うべきだったんだけど、ごめんよと虎次は言う。 「付き合っている事伝えていないし、僕が雪乃ちゃんの家に居るの見られるとまずいかなって思うと逃げるしかなかった」  暗い室内で、誰かがドリンクを飲む音が聞こえる。 「それで、昨日。全然虎に会えなかったのか」  雄平の声が聞こえる。雪乃はまだ顔をあげられなかった。恥ずかしさもあるが、それよりも昨日の夜のユイカの告白を見ていた事で、余計に申し訳なく頭が上がらない。 「うん。なんだコレ、じゃあ実際なんもなかったって事か」 「そうだね」  皆が頭を下げているので、鷲尾と瓶太が二人で、納得しあっている。 「誰も、怒ってないんだね。だったら、顔あげていいんじゃないの。僕は知らないけど、なんか皆が友達想いだってことは、一番近くで見てた僕が保証するよ。誰か悪役が必要ならストーカーの僕が悪い。許してくれないかな」  ストーカーが物語を締めたっていいと思うのだ。  退屈な人生も時々くらい語り部になりたいと思う。主役も名脇役も無理な無職で、どうしようもない僕だったって。逢いたい人位は居る。幼い頃からずっと沢山遊んでくれた大好きな姉とも十数年ぶりに再会出来たのだから、生きていけば何かあるだろう。     
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