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「聞きようによっては大変失礼だ」
くすくす笑いにかわる。
できましたよ。と、わたしのあたまをぽんとたたく。礼を述べながらあたまをさわると、そこには複雑な編み込みがほどこされていた。
「みごとだな」
心からの感嘆を表すと、少年は謙遜した。
「これくらいしないと腕がにぶります」
それを聞き、昔少年が江戸の町で髪結いの仕事をしていたことを思い出す。
編み込みなんて江戸時代にあったか? と聞くと、実は昨日小夜さんに教わったばかりなんです、と少年は答えた。小夜さんとは、特別美しい夜にだけ現れる女性の名前だ。少年は彼女と親しいようだが、わたしは彼女と言葉を交わしたことがない。
「腕だけで評価されたかったんだけど」
嘆くように呟きながら、いとしそうにわたしの髪を指でなぞる。先程見た長い指がわたしに触れているというだけで妙に緊張する。
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