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「やっぱり、ね」
鍵をかけられているのは想像した通りだった
トイレでも何度も閉じこめられた
その度に窓から脱出してきた
今回も、その手でいこうか、と下履きを持って乗り越えられる窓へ向かう
外は雲が生き物のように不気味に蠢いていて、確かに雷雨の予感をさせる空だ
傘はない
早く帰ろう
足をかけられる高さの窓から外に出ると、
「何?」
低い、振動音のようなものが頭上から降り注いでいるような感覚
あまり気持ちの良いものではない
空を見ると鈍色の雲が渦を巻き、その淵を時々眩しい光が走っている
雷が近づいている
走って行こう、そう決めて駆け出そうとした時、異常は唐突に起きた
「!?」
渦まいていた雲の中心が開き始め、眼を射るほどの眩しい空が出現した
たまらず眼を閉じると、再びあの振動音がハッキリと音として聞こえてきた
眼を閉じた事で、この振動音は本当に空気が振動している事に気付く
何かが、この辺りの空気を震わせている
「あれは?」
眼が慣れると雲の切れ間から大きな影が現れるのが見えた
巨大な蛇のような、しかし直ぐにそんな生物でない事は分かった
手のようなものが見えた
猛禽類のような鋭い爪で、水晶のような珠を持っていた
ゆっくり輪を画くように宙を舞っている
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