アーリアスティの地へ

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アーリアスティの地へ

珠の光が浸透してゆく程、瞳子の意識が薄れて身体が溶けるような感覚に包まれた 手足が鉛のように重くて動かせないのに、それすら心地好い 温かい微風に全身を懐かれ、風が表面にこびりついていた負の感情を剥がし飛ばしてくれ、隠されていた無垢な心を呼び起こしてくれる 全てしがらみから解放されるようだ ずっとこの場に居たい この場に居れば、自分はキレイになれる この場に居れば、もう心の鍵は要らない この場に居れば、自分を好きになれる この場に居れば、きっと・・・ そう甘えたくなる 瞳子は重い目蓋をゆっくり上げてみた 「これって・・・」 まるで硝子の底の水の中 曲がって差し込む光は強いのに、眩しくない 自分を取り囲む空間はゆうらりゆうらり、と流れ瞳子を運んでいた 「私、もしかして死んじゃったの?」 瞳子の最後の記憶は、龍が落とした珠を拾おうとしてたが寸でで間に合わず、しかしその珠は割れる事なく瞳子に吸収された 「それともあの龍を見たときから、もう死後の世界だったのかな?」 なら、本当に死んだのはいつだろう? けど、悲しいとか悔しいとか、そんな思いはない 中学に入ってからは常に自分を偽り、面倒を避けて人の言いなりになっていた大嫌いな自分それがようやく終わるなら、それでも良い 瞳子は再び目蓋を閉じて、空間に身を投げ出した ゆったりと運ばれるのを感じながら意識を沈めた 「・:…”””〇~」 瞳子の耳に、不思議な響きの音が聞こえた 「ぃ:×*”だ’””ね、」 その音の中に、聞き取れる気がする音が雑ざる 音に意識を向けてみると、 「大丈夫かな?全然起きないね」 「紫苑も大変な事をしてしまったな」 「紫苑は?」 「外で落ち込んでおるわ」 ちゃんとした会話の声だった 声の感じから老人と幼い子供のようだ 会話の中に出てきた《紫苑》というのは誰かの名前らしい 「生きていたのがせめてもの救いじゃがな」 「うん」 あ~、私生きているんだ? あれはやっぱり全て夢だったのか、とかなりがっかりしている また起きたら、あの毎日が始まる 憂鬱な気持ちになったが、それが現実なら仕方ない 学校を休めば事態は悪くなるばかりだという事は分かっている お母さんも、私が苦しんでいる事を認めずに学校に行かせる なら、あと何年か我慢して学校を卒業してから家や町から出ていくのが賢明だ
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