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瞳子とラキアが町に入った時から奇異な視線が注がれた
瞳子を見てヒソヒソと小声で話し合って、あからさまに指さし罵倒の言葉を口にしている者も少なくない
薄い色彩の髪しか知らない者が、黒という最も濃い色の髪を持つ者を訝るのは当然かもしれない
闇の色として邪悪な印象を与える黒を持つ瞳子へ向けられる眼には悪意のようなモノもある
「瞳子、」
「平気よ、行きましょう」
「でもあいつら、瞳子の事をあんな」
眼で見るなんて、と瞳子が傷つくのを心配するラキアに瞳子は笑ってみせた
「私にはコレがあるから何かを仕掛けてくるなんて事はないから」
と、レクスから貰った琥珀のブレスレットをかざす
よそ者でも、レクスが認めている者である証
「・・・でも」
よそ者には厳しい、とマーロンからも聞いている瞳子には予想出来た反応であるし、瞳子にとっては悪意の視線など慣れたものだった
「直接仕掛けてこないなら無視していれば良い、そうでしょ?」
こちらからは仕掛けない
瞳子はラキアを促しながら、遠巻きになりがちになる人々の間を抜ける
「瞳子、強いね」
これが自分をよく思わない人の中を平然と歩く瞳子に対するラキアの素直な感想だ
「僕なら逃げ帰っちゃうよ」
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