0人が本棚に入れています
本棚に追加
私は思い出した。
-あれはね、私が一人で帰りづらかったからなの。
私は、恩人なんかじゃない。
僕はすい臓がんだった。もう長くは生きられない。でももう一度でいいから、彼女に会いたい。その思いで僕は病院生活ではなく普通の生活を選んだ。そしたら奇跡が起こった。彼女が本屋に現れたのだ。
-健さん、私にとっての救世主はあなたなの。
僕はある小説を信じている。
それは彼女と話すきっかけになった最初の本。
-真夜中のデート。
その物語は、亡くなってしまった夫が深夜の2時になると妻の前に現れるという話
私は辺りを見渡した。
-どこにも、、いないよ。。
泣き崩れていると、聞きなれた声が聞こえた。
-泣かないで。
-健さん!
振り返ると彼がそこに立っていた。
-本当に、、健さん、、なの?
-そうだよ。もう生きてはいないけどね。でも本当になったね。実写化だよ!
彼はいなくなってからも私を励まそうとしてくれた。
それだけでまた胸が苦しくなった。
-私小説読んだよ。
-まだ完結してないんだよな~。
-行く。私も健さんのところに行く。
彼はいつものような笑顔ではなく、少し儚げな顔を見せた。
-小説ちゃんと読んだの?
-読んだよ。
そう言うと彼は最後のページを開いて私に見せた。
-
最初のコメントを投稿しよう!