封印されし大学ノートの事

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 意図は、見えなくはないがここはあえて惚けておこう。あまり物分かりが良い息子で居ると、色々余計な事を買って出るハメになるんだ。すでにそういう事は学習済みである。少し突き放す位にしておかないと親の子離れが進まないんだぞ、というのは同級生で今も飲む付き合いくらいはしているノボの談だったな。そうだな、それは在るかもしれないと俺は憶えていてここの所、実家とは少し距離を取る様にしていた。  そうしたら、今更反抗期なの?などと言われたりもしたので、もしかしたら手遅れなのかもしれない。 「もう、ともちゃん!公民館解るでしょ?公民館!宮若町公民館!うちの目の前にある建物!」 「解るけど、」 「それをこれから壊すのよ」 「うん、地方の過疎化が問題視されている昨今、古い公民館を建て替えが出来るくらい子供が居る家庭を確保できているらしい実家の町内は平和だなぁ、という感想を述べておきましょうか?」 「公民館暫らく使えないでしょ?色々荷物もあるし、丁度ウチには使ってない部屋がある訳じゃない」  あー、やっぱり?やっぱりそういう方向性?  なんとなく察していたから言いたくなかったので黙っておこう。母よ、続きをどうぞ。 「ともちゃんの部屋、暫く公民館の替わりに使うから!」 「おいおいまてぇええい」  多分、はたから聞いていたらそんなに慌てた様には聞こえないテンションで俺は、母親にストップを掛けた。ちょっと芝居がかった調子で続ける。 「整理しないと使用許可は下せませんぞ、母よ」 「でしょー?そう言うと思って電話したのー」     
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