封印されし大学ノートの事

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 子供に約束なんかさせたって、守られる保証なんて無い様なもんだからな。俺は自分が子供だった頃の事は忘れてないから、約束なんて破ってナンボだという当時の『子供』の思考回路を良く分かっている。  ところで俺はな、結構几帳面な男なんだ。  自分にとっての利便性重視で置かれていた荷物を仕方が無く、寄せて積み上げて部屋に空間を開ける為に移動させていく。  こればっかりは母には任せられない、母親も、俺がそれを誰かに頼むことを絶対にしない事を知っているから急に電話を寄越して、荷物どかしてと言って来たのだろう。  ま、さっさと終わらせて地元散策でもして、有意義に過ごそうじゃないか。  もともと綺麗に整理されてある訳だから、荷物の移動はさほど大変な作業という訳でもない。  ちゃんとダンボール側面に何が入っているかという目録も付いているのだが、万が一これが目に入って読み込まれるとまずいので、これらをはがして記号管理し、目録は別ファイルにして封印する事にした。  そういう作業が一段落して、フォルダに纏めるのは後にしてまずは箱を奥に積み上げてスペースを空ける。ほどなく終わって、一服を勧められる頃には大体片がついていた。  振る舞われた茶菓子などを頬張りながら、俺は数年前作った倉庫の目録をファイルに綴じ込みながらざっくりと目を通していた。そうして……一つだけ、記憶にないものを見つけて目を止める。     
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