180人が本棚に入れています
本棚に追加
/9ページ
うっすらと星の出て来た空を見ながら、侑介は「昔の人マジ勿体ねぇ」と呟いた。そういう彼だって、ここに来て初めて触れたようなものだけれど。
「まぁ、これからまた都会の喧騒とは違う発見をいろいろやっていけたらなって思ってるんだ。せっかくこんなところに招待してもらったんだし」
壮太は泡を吐き出すように、ぷかりと言う。いつになくリラックスしているのがわかる。弛緩しきった笑顔が何よりの証拠だった。
おーい、ただいまー!
窓の向こうから声がした。夢から醒めたように我に返る。見ると、すぐ下の通りで身長差のある2人の人影がこちらに手を振っている。
「あ、帰ってきた!」
2人ともそれぞれ重そうにビニール袋をぶらさげている。相当買い込んでいたらしいのが一目でわかる。料理だって相当量作っているのに、果たしてテーブルに乗り切るだろうか。今日一番のピンチが訪れた。
「さ、すごいことになりそうだから、もうちょいテーブル片付けようか」
立ち上がり伸びをする。壮太の背中を見て、侑介もそれに倣った。
三日月の見守る夜はこれからだ。
ー終わりー
最初のコメントを投稿しよう!