41人が本棚に入れています
本棚に追加
/11ページ
───1年前、私には2年間付き合っている彼氏がいた。同じクラスの日野翔也。
花の丘。
ひんやりと冷たい空気が冬を感じさせる遊歩道に、深緑色のネクタイを付けたブレザーの制服の男女が歩いている。
「咲和、期末テストどうだった?俺、数学自信あんだよねー!」
「あんなに難しかったのにー!?翔也得意だもんね。私は赤点じゃないことを願ってるところ…」
開放感を露わにしている翔也とは反対に、私は頬を膨らまし不貞腐れたように言った。
「咲和は数学だけはだめだもんなー。だから俺が見てやるって言ったのに!」
「次からはお願いしますー!」
我ながらつっかかるような言い方だ。
「おう!任せろや!…次、な。」
翔也は咲和に笑いかけながらも、目を伏せた。
───私は、自信のある教科について自慢げに話し始めて、彼の様子に気づくことはなかったんだ。
最初のコメントを投稿しよう!