線香花火

10/13
前へ
/13ページ
次へ
あ、という声に空に目を戻す。 つい、と星座のすき間に尾をひいたのは、流れ星だろうか。 幼い頃からそうしてきたように、とっさに胸の前で手を組んだ。 ……遼ちゃんがきっと、幸せになりますように。 美花、と小さく名前を呼ばれたような気がした。 静かに目を開ければ、近くの暗闇で、蛍が明るく光っている。 熱く、静かに、まるでその身を焦がすかのように、蛍が光る。 ふいにその光をうらやましいと思った。あなたをこんなに好きなのだと、この身体ごと光って見せることができたらいいのに。
/13ページ

最初のコメントを投稿しよう!

31人が本棚に入れています
本棚に追加