線香花火

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夕方に降った通り雨のせいか、空気は湿っていてかすかに重かった。 それは昼間の強烈な陽射しに暑く(こも)ったアスファルトの熱が、いつまでも抜けていかないからなのだろう。 それでも、夏祭りの行われている神社や参道や近くの広場は、すでにけっこうな人であふれていた。 うす紫に染まってゆく夕闇の中で足元から吹き上がる熱と、たくさんの人たちの持つ、もわもわとした不可思議な熱さ。 着なれない浴衣の裾が足に(から)む。そして可愛いからというだけで選んだ赤い鼻緒の下駄は、すでに私の足に痛かった。
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