線香花火

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ざわざわと落ち着かない風と、それに混ざるほんのりと甘い香りはりんご飴か、それとも綿菓子だろうか。 最後にお詣りをすませてから、人の多い参道のあたりを抜けて、ぶらぶらと川辺まで降りていく。 家族連れやいくつかのグループが、それぞれ河原で小さく花火を楽しんでいた。 川の上を吹いてくる風は、喧騒の中を過ぎてきた私たちに、少しだけ優しい。 「ねえ、知ってる?……線香花火ってさ、先に燃えつきた方が負けなんだよ」 わざと明るくそう言った私の声に、遼太郎は「負けってなんだよ」と、小さく笑った。
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