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そしていつの間にか、河原にいるのは私たちだけになっている。
せせらぎの音を感じて、そこに水の流れがあることを、私は思い出した。
「送り火、終わったのかな……静かになったね」
言いながら浴衣の裾を払って立ち上がると、同じように膝を伸ばした遼太郎が、あ、と小さな声をたてた。
遼太郎の両手が私の背中に伸びて、それからゆっくりと目の前に帰ってくる。
「ほら、蛍」
思わず覗き込んだ手のひらの中で、蛍の柔らかな黄色が息をするように光り、そして消えて、また灯る。
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