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「わあ……」
「美花の帯、露草の模様だから、間違えたのかな」
え?と顔を上げた私の瞳に、遼太郎の優しい笑みが落ちた。
つきん、と胸の奥が痛む。
あわてて視線を戻すと、遼太郎の長い指の間からもう、蛍はするりと脱け出そうとしていた。
私たちの視線はひとつになり、ゆっくりと舞い上がる蛍の姿を追った。
いつの間にか現れた何匹かの蛍たちが、ふんわりとたゆたうように揺れている。
その姿はまるで、川辺のゆるやかな風にゆらゆらと流されてゆくかのようだった。
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