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なんか、ベアに全部知られていたかと思うと、癪に障る・・・と思ったのに
奴は、バカにすることなく、全部を知ってても変わらない態度に
私はなぜだか、ほっとしたのだ。
「・・・たぶん、それ私です。泣いてたこと、知られてたの、マスターだけじゃなかったのは、恥ずかしいですが。」
当然ながら、気まずさMAXだ。それでも、まぁ、なんとなくベアだったので、まいっか。という気分になるのが不思議である。
「全然だよ~僕なんか、しょっちゅう泣いている。動画で映画観ても、友達の結婚式でも、小さい子供のおつかいとか・・・きりがないくらい!」
満面の笑みで、堂々と情報を曝け出すベア。
まあ、ベアっぽい。この人は何でも感動しそうだ。
「植ちゃんは、頑張り屋さんなんだよ。一生懸命仕事したから、そういう感情が溢れたんじゃない?それは、恥ずかしいことでも何でもない。カッコいいことだよ!」
だって、手を抜いてたら、そんな風に悲しかったり、悔しかったりくないでしょ?
本気でやった証拠じゃない。
そういう人は、なかなかいないよ。
とっても素敵なことだと思うな。ぼくは。
そんな言葉をくれたベアは、さっきまでの微笑みよりずっと深い笑みで、優しい眼差しがキラキラして見えた。
なんで、分かってくれるんだろう。
初対面といってもいいぐらいなのに・・・
それでも、ベアの言葉には嘘はない気がした。
全くといっていいほどの赤の他人。
たまたま、同じカフェに出くわした客同士という関係性。
偶然でしかないのに。
うっかりとでも言おうか。
これがきっかけで、ベアと私は、先の見えない流れに乗っていく。
ほんと、人生はわからない。
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