第13章 どしゃ降りの中、全力

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『それで、今どこにいるの。迎えに行くよ。とにかく今夜はうちに泊まればいい。居場所教えて』 急かされるように尋ねられてはたと困る。いやそう言われても。 「うーん…、今夜はとりあえず泊まること確保しちゃったし。前払いでパック料金払っちゃったしなぁ」 八時間パックでまだほんの三十分ほどしか経ってないはず。ただでさえ貴重な現金を使ってしまったと思うと。何だかこのままここを立ち去ってお金を無駄にするのも忍びない。それに。 「なんか、そうやってエニシダさんの優しさにずるずると甘えるのも正直どうかと思う。この事態を招いたのは全部自分の責任だし。こんなことになるかもってちゃんと想定できなかった自分の甘さのせいなの。だから」 彼はうだうだと続くわたしの述懐を珍しくきつい声で断ち切るように遮った。 『そういうのはもういいよ。誰が悪かったとか責任がどうとか。こうなったら考えても仕方ないでしょ。だって、どうするつもりなの。今日のところはどこか泊まるところを確保したのか知らないけど。…ずいぶん騒がしい場所だね。そこ、大丈夫?』     
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