第13章 どしゃ降りの中、全力

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電話越しにも周囲のざわつきがわかるらしい。寝付くときも、一応アイマスクと耳栓はあるみたいだけどそれでも他人の気配を周囲に濃厚に感じそう。こんなんで今夜ちゃんと眠れるかな。内心で危惧しながらもあえて明るい声を出した。 「うん、女性のお客さんもいっぱいいるみたいだし。ひと気も多いし店員さんも親切だから危ないこともなさそうだよ。こういうとこ初めて来たけど、なかなか便利だよね」 『ネカフェか何かか』 こういうの通うライフスタイルとは到底思えないが。それでもすぐに推察できたようだ。 「わかる?来たことあるの、縁田さん?」 『行ったことはないけど。一般的知識としては多少は。カーテンみたいので仕切られてるだけでプライバシー問題あるんじゃないの?』 さすがに心配そうな口調だ。わたしは何でもないことみたいに落ち着いたふりをして、彼を安心させようと試みた。 「一応ちゃんとドアだよ。鍵はかからないみたいだけど。外から覗ける小窓があるし、壁がだいぶ薄いからか周りの気配は感じるね。でも、その方がある意味安心じゃない?何かあったら店員さんがすぐ気づいてくれそうだし。シートもフラットだからみんなここで寝てるんじゃないかな」 だからこんなの普通だよ、全然平気。と伝えようとしたつもりだったけど、彼はやっぱり得心した様子ではない。     
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