第13章 どしゃ降りの中、全力

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『一晩くらい、雨露をしのぐ分には用は足りるかもしれないけど。まさかずっとそこに泊まり続けるわけにはいかないでしょう。例え今夜そこで何とか済ますにしても。そのあとどうするつもり?』 「まあ。…こういうとこを梯子して泊まり歩く人もいるみたいだけどね」 いわゆるネットカフェ難民てやつだね。ひと月合計したらそれなりのお金になりそうで、それならどこか借りた方がいいだろって気になるけど。 多分それぞれいろんな事情があるんだろうな。敷金礼金が用意できないとか。引っ越し代がないとか。日銭は作れるけど万単位のまとまった金額を月末にまとめるのが難しいとか。 ふと、彼の側での電話の向こうの雑音もだいぶ大きく聴こえてるのが気になった。街中に出て歩きながら話してるのか、周囲のざわつきも感じるけど。それより何よりこの流れるような大きな水の音。バケツか何かを逆さにぶちまけたみたいに絶え間なく路面を打つのが微かに伝わってくる。これは…、雨音? 「そういえば。今、ゲリラ豪雨なの?大丈夫、外?」 思わず心配すると、エニシダさんは取り合わずせかせかと息を切らすように言い募った。 『僕のことはどうでもいいよ。明日からどうするつもり?まとまったお金あの人に借りるの、僕じゃなく?』     
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