0人が本棚に入れています
本棚に追加
「雨が降ってきたね」
あなたが言った気がするけど、わたしは上の空で「そうだね」と言った。
転勤で遠くに行くことが決まってからやっと会えたその日、車の中でワイパーが動くのを見ていた。
「夕方の飛行機だから・・」
「さみしい?」
今までも思うように会えたことなんてなかった。恋人でもないあなたに何を言ったらいいんだろう。
「大丈夫、じゃあね」
何も伝えられずに車を降りた。
笑顔で手を振った。車を見送って家路を急いだ。
先程まで小降りだった雨は大粒になってアスファルトに黒い水玉模様を作り出す。
空を見上げてわたしは泣いた。アスファルトに描いた水玉模様はわたしの涙。
真夜中に目が覚めた。頬が濡れている。
あの日、出なかった涙が溢れて止まらない。
夢は現実の続き
枕の横に置いてあるスマホにメッセージの知らせが光っていた。
最初のコメントを投稿しよう!