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二週間前、俺の家に押し掛けて来た日だ。
「……ほう?」
彼女が俺と目を合わせない。
「次は焼酎ロックでいい? 塙ー?」
同僚は本人に確認もせず注文を取ろうとする。
「いや、カシオレで!」
彼女が愛想のいい店員に慌てて注文すると同僚が茶々を入れた。
「そんなかわいーお酒飲んだことないじゃん」
そうか、可愛いお酒は専門外なんだな?
「そんなことないよ? カルーアとかも好きだし」
彼女がやんやん言ってる間に店員がカシスオレンジのチューハイを持ってくる。
「ありがとーございまーす!」
そう言って彼女が受け取ろうとしたグラスを、手を伸ばして俺が先に取ってやった。彼女が「あ!」と口を開けて俺の方を見た。俺はゴクゴクとカシスオレンジを飲み、ニヤリと微笑む。
「史佳ー?」
わざとらしく語尾を伸ばす俺に、引き攣った笑顔の彼女が恐る恐る尋ねた。
「な……何でしょうか?」
いきなり下の名前を呼んだので同僚がぽかんとしているが、酔ってるから知らない。
「今晩、お仕置きな」
奸計履行の罪状により、晴れて彼女は今晩俺の家に懲役が決まった。さぁ何をして貰おうか、せいぜい奉仕するがいい 。潮が引いたような顔をした彼女の横顔をニヤニヤと眺めながら、俺は酒をあおる。
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