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ブルブルブル……ブルブルブル…… 終礼のアナウンスが終わるとともに震え出した携帯は、高橋からの着信の知らせだった。 「もしもし、岩永……いま、話せる?」 いつになく沈んだ声色で、そう聞いて来る。 「大丈夫だけど…、どうした?」 「落ち着いて聞いて欲しいんだけど…」 まるで自分に言い聞かせるように、そう言った高橋は、しばらく間を置いた。 ほんの1~2秒だったと思うが、その沈黙が電話の向こうの高橋の緊張を伝えて来て、俺にも伝染する。 その前置きが、これから伝えられる事の衝撃の大きさを予感させる。 「千波が、亡くなったんだ…」 それは、去年の秋まで付き合っていた彼女の死の知らせだった。
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