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8月の最後の日曜日 千波の告別式は行われた。 暑い暑い夏の日で、蝉の声がやけに耳についた。 小高い丘の上にある式場は、千波の友人と思われる喪服を着た若い女性が達がたくさん集まっていた。 会場に入ると、小さな箱の中に収まった千波が、祭壇に置かれていた。 俺はそれを遠くから、ずっと見つめていた。 少し千波を恨んだ。 もし、俺が千波と結婚していたら、家族だったら、 一番近くでずっと側にいれたのに。 息を引き取る時も、引き取ってからも、仕事なんて休んで、ずっと一緒にいれたのに。 いや、生きている間だって、病気と闘っている時だって、ずっとずっと一緒にいたかった。 みんなが言うように、千波が俺を待っていたんだったら、なぜ千波は別れようなんて言ったんだろう。 本当は引き止めて欲しかったんだろうか… 気づいて欲しかったんだろうか… 俺、そんなに頼りなかったか? ……なぁ、千波。 俺は、ずっと一緒にいたかったよ。
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