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ドトールに着いたと連絡があったので、状況が飲み込めないまま高橋の元へと向かう。 俺の異変に気付いたのか、上司にどうしたんだ?と声をかけられたので、大学時代の友人の急死の知らせを受けたと答えた。 上司は、それは大変だったなと、今日は帰っていいぞと背中を押した。 急ぎの仕事もなかったし、どちらにしろこんな状態では、まともに仕事なんて出来る筈もなく、上司に礼を告げて会社を出た。 ドトールに着くと、すぐに俺を見つけた高橋が近寄って来て、俺の背中に手を当ててきた。 その手のひらの温かさが、俺の涙腺を刺激した。 「大丈夫か?」 その優しい声に、やはり現実なのかと思い知らされる。 高橋は、いつもふざけてて、会ったら取り敢えず、バカだのアホだの、大人気ない事しか言わないのに… なんなんだ、この普通の対応は。 「ごめんな、わざわざ来てもらって」 「アホっ。 こんな時に、気を使うな」 そう言って頭をガシガシと撫でられ、その拍子に俯いたまま、顔を上げる事が出来なくなった。 「取り敢えず、行こう。早希と南が待ってるから…」 そう言って、高橋は、俺を出口へと促し、俺たちは駅へと向かった。
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