第11章:日本一を目指して

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  稜也、乃里の袖を引く。   乃里、稜也に微笑んでうなずく。 乃里「優駿さん。」 佐々木「はい。」 乃里「この子、あなたの絵が大好きでして。」   稜也、乃里の隣で小さくなる。 佐々木「そうなの? ありがとう。」 乃里「この子も絵を描くんですけど。」   乃里、鞄から絵を取り出す。 乃里「ちょいと見てやって頂けますか?」   甚三郎、顔をしかめる。   佐々木、笑顔でうなずく。 佐々木「もちろん!」   佐々木、絵を受け取って広げ、目をみはり、甚三郎を見る。   甚三郎、視線を外す。   佐々木、かがんで稜也に目線を合わせ、稜也の両肩を掴む。   稜也、困惑して体を強張らせる。   佐々木、真剣な眼差しで稜也を見つめる。 佐々木「これ、君が描いたの?」   稜也、小さくうなずく。 佐々木「名前は?」 稜也「稜也、です。」 佐々木「稜也くん。すばらしいよ。僕も君の絵、大好きだ。」   佐々木、満面の笑みを浮かべる。   稜也、佐々木を見つめる。   佐々木と稜也を見つめる甚三郎、顔を背ける。   佐々木、腰を伸ばして、甚三郎に微笑みかける。 佐々木「今日は驚きの連続だよ。乃里さんといい、稜也くんといい。甚さんには宝物がいっぱいだね。」   乃里、さっと顔色を変える。   甚三郎、佐々木に向き直り、眉をひそめて険しい表情をする。   稜也、乃里の後ろへ隠れて身を縮め、乃里の着物をぎゅっと掴む。 甚三郎「んなこたねえよ。」   甚三郎、不機嫌そうにそっぽを向く。   相澤、離れたところから手招きする。 相澤「おおーい、甚のじ。ちっと。」   相澤を見やる甚三郎、佐々木に向かって笑顔を作る。 甚三郎「優駿、また今度ゆっくり、な。」   甚三郎、笑顔を消して足早に立ち去る。   佐々木、面食らった表情で乃里を見る。 佐々木「僕、なんかまずいこと言っちまいました?」   乃里、曖昧に微笑んで甚三郎の後ろ姿を見つめ、稜也の手を握り締める。
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