幼馴染の帳

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「ねーねー、晃太」  ふいに会話がとぎれたところで、ふと寧々は運転手に話しかけた。「何」とそっけない返事を運転に集中しているからだと勝手に判断し、晃太同様まっすぐ前を向きながら寧々は彼へと問いかける。 「竜が弟なら、わたしと晃太はどっちが上だと思う?」 「は?」 「自分でも言ってたけど、竜は明らかに末っ子じゃん? そしたらわたしたちはどうなのかなって思って。わたしが一番上のお姉ちゃんで、晃太が真ん中なのか、それとも晃太が一番上のお兄ちゃんで、わたしが真ん中なのか」 「…どうでもよくないか?」 「いいじゃん。このくらい付き合ってよ」  たぶん、夜遅くで眠かったのもあった。でもなんとなく、なんとなくまだ寝る気分にはなれなくて、強引ではあるが話を続行に導いていく。寧々や竜之介と違って寝るわけにもいかない晃太はしばらく考えるように顔をしかめていたけれど、やがて車が信号に止まると同時にぽろっと言葉を口にした。 「…俺はお前の弟とか絶対嫌だ」 「えー。じゃあ晃太がお兄ちゃん?」 「…兄貴も嫌だ」 「ねーちゃん、コータはまさかのペット希望かもしれないよ」 「えっ、晃太マジで…?」 「んなわけあるか」  竜之介の横槍をばっさりと切り捨てた晃太は、しばらくもごもごと口の中で何かを言っていた。だが前方で夜に光っていた信号が青になると、何かを諦めたみたいに、だけれどどこかやけくそ気味な声を出しながら車を発進させる。 「別に、兄弟じゃなくたって、家族になる方法くらいあるだろ」  きょとんとした寧々に、一拍おいて竜之介が笑って、晃太は再び溜息をついた。 「あはは、夜明けは遠いね、コータ」 「……うるさい」
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