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 さすがの男もうろたえた様子を見せたかと思うと、今度は刃物をその女性客の方へ向け走りだした。  意外と自分の事は自分でもわかっていないことが多い、というのはどうやら正しいようで、その時の自分の行動は何よりも自分自身を驚かせた。再び悲鳴が上がるや否や、オガタはレジカウンターから飛び出し、男と女性客の間に飛び込んだのだった。  もしかしたら、男はその女性に危害を加えようとまでは考えていなかったのかもしれないし、これは自分が招いた悲劇だったのかもしれないが、なんにせよ、つくづくロクな人生じゃないな―――とオガタは腹部に突き刺さった刃物を見ながら思った。  激しい痛みに意識が朦朧としていく最中、「お互い次はなんだろうな」と男の声で聞こえた気がした。
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