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「人間の間にある考え方で、死んだ魂はまた何か別の命になってこの世に生まれ変わってくる、というものだ」
それがどうした、と言われるかとも思ったが、蜘蛛の反応は意外にも「面白いな」と、好感触であった。
なにがいい?と、オガタは自分がされたように蜘蛛に質問を投げかけた。
「生まれ変わるなら、なにがいい?」
蜘蛛は「そうだな・・・」と少し考えると、「お前、どれくらい生きてきた?」と、逆に訊いてきた。
「・・・土の中で四年、やっと大人になって地上に出てから七日。四年と七日だ」
本当は地中にいた正確な長さはわからなかったが、ここは男の言葉を借りることにした。
「四年と七日か。長いのか短いのかわからないな。俺たちはだいたい一年で終わりだ。子供の頃も地中にはいないがな」
喉元に突きつけた脚を動かさないままに蜘蛛は言う。
「・・・人間にでもなってみるか。あいつらは大人になってからも長く生きられるのだろう?なんでも出来そうだ。こんなに素晴らしいことはないだろう」
オガタは蜘蛛の言葉を聞くと、実際そう出来たかはわからないが―――鼻で笑った。そう言った蜘蛛をか、それとも運命のいたずらを、か。
「そううまくもいかないから、せいぜい努力しろよ」
蜘蛛の脚が近づいてくる。オガタは世界が闇に包まれる間際、お互い次はなんだろうな、とは言うまでもないなと思った。
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