第2章 真田幸村(自称)参上!

9/12
前へ
/166ページ
次へ
俺はここにいるのに、何故だか、いなかったかのように彼奴らは飯食ったり、洗濯したり、喧嘩したり、ごく普通の日々を送ってるんだ。 おまけに俺は何故だかこの場所から動けなかったんだ。半径五メートルぐらいの不思議な空間があって、その空間内は自由に動き回れる。 しかし、その外側は一歩たりと動けねぇ。だから仕方なく、毎日武士とその家族が生活する様子を何となく見ていた。 俺はどうしてここにいるのか、自分が誰なのかわからないまま、毎日時をやり過ごす。 時々あのじいさんみたいな見回りが来るけども、二、三言交わすだけ。 そうこうしているうちに屋敷の主人が変わったり、大火で街が焼けたりしていくうちに武士が洋服を着出した。 ここは上田城に近かったから、外国人技師も来たことがあったな。外国と戦争して爆弾が降ってきたこともあった、 流石にあの時はもう終わりかと思ったが、屋敷が爆弾で無くなっても、俺は幽霊だから関係なかったなぁ」 幸村はそう言って笑った。爆弾でも俺は死ななかったという所で笑って欲しかったようだ。 けれども全然笑えない。目の前で起こってることがショッキングすぎる。夢だとしても納得のいかないようスケールだ。 そのおかげで頭が混乱していた。 それに正直に言うと、今の話が信用できなかった。幽霊だったことは間違いないとして、本当に彼が真田幸村で四百年もここにい続けたのだろうか。 事実、言葉遣いがおかしい、真田幸村が使う言葉じゃなくて、最近の私にも通じる言葉だったからだ。 「てゆうか可笑しいでしょ。もし幸村だとしたら、どうして武士なのにそんな今風の言葉遣いしてるの?武士ならそれがしが~とか拙者が~とか言うんじゃないの?俺がってかなり可笑しいよ」 自称幸村の核心をついたと思ったけど違ったようだ。彼は笑いながらこう言った。 「四百年過ごしてるうちに、言葉も変わる。言葉なんて生物だからな、毎日聞いているうちに、それが普通の言葉になり、やがて廃れていく。 百年後には超可愛いが古語辞典に乗ってるかもしれない。それにさ、もう何百年前の言葉なんて忘れた。 折角、今の時代に存在してるのに、時代遅れの言葉なんて使いたくないじゃん」 そう言うと、幸村はまた笑った。 ~じゃんで笑って欲しかったようだが、私は真剣な場面でふざける奴は大嫌いだ。
/166ページ

最初のコメントを投稿しよう!

41人が本棚に入れています
本棚に追加