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俺はここにいるのに、何故だか、いなかったかのように彼奴らは飯食ったり、洗濯したり、喧嘩したり、ごく普通の日々を送ってるんだ。
おまけに俺は何故だかこの場所から動けなかったんだ。半径五メートルぐらいの不思議な空間があって、その空間内は自由に動き回れる。
しかし、その外側は一歩たりと動けねぇ。だから仕方なく、毎日武士とその家族が生活する様子を何となく見ていた。
俺はどうしてここにいるのか、自分が誰なのかわからないまま、毎日時をやり過ごす。
時々あのじいさんみたいな見回りが来るけども、二、三言交わすだけ。
そうこうしているうちに屋敷の主人が変わったり、大火で街が焼けたりしていくうちに武士が洋服を着出した。
ここは上田城に近かったから、外国人技師も来たことがあったな。外国と戦争して爆弾が降ってきたこともあった、
流石にあの時はもう終わりかと思ったが、屋敷が爆弾で無くなっても、俺は幽霊だから関係なかったなぁ」
幸村はそう言って笑った。爆弾でも俺は死ななかったという所で笑って欲しかったようだ。
けれども全然笑えない。目の前で起こってることがショッキングすぎる。夢だとしても納得のいかないようスケールだ。
そのおかげで頭が混乱していた。
それに正直に言うと、今の話が信用できなかった。幽霊だったことは間違いないとして、本当に彼が真田幸村で四百年もここにい続けたのだろうか。
事実、言葉遣いがおかしい、真田幸村が使う言葉じゃなくて、最近の私にも通じる言葉だったからだ。
「てゆうか可笑しいでしょ。もし幸村だとしたら、どうして武士なのにそんな今風の言葉遣いしてるの?武士ならそれがしが~とか拙者が~とか言うんじゃないの?俺がってかなり可笑しいよ」
自称幸村の核心をついたと思ったけど違ったようだ。彼は笑いながらこう言った。
「四百年過ごしてるうちに、言葉も変わる。言葉なんて生物だからな、毎日聞いているうちに、それが普通の言葉になり、やがて廃れていく。
百年後には超可愛いが古語辞典に乗ってるかもしれない。それにさ、もう何百年前の言葉なんて忘れた。
折角、今の時代に存在してるのに、時代遅れの言葉なんて使いたくないじゃん」
そう言うと、幸村はまた笑った。
~じゃんで笑って欲しかったようだが、私は真剣な場面でふざける奴は大嫌いだ。
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