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俺の好みのタイプは昔から変わらなかった。
おしとやかで女性らしくてかわいいタイプ。
「はい、これ」
「サンキュ」
休み時間。俺はいつものように、柿の種ピーナッツの柿の種だけ食べて、残ったナッツを幼なじみのゆず子に渡しに行った。
こいつは柿の種に入っているナッツが好物なのだ。
ゆず子は女らしくない。クラスの男友達より男っぽい。
ボーイッシュという言葉は彼女のためにある。短い髪をぽりぽりかきながら、ゆず子は言った。
「最近は柿の種のあられだけで売られているやつもあるみたいじゃん。今度からそれ買いなよ」
「ゆず、ピーナッツに飽きたの?」
「いや飽きひん」
「じゃあいい。俺たぶんピーナッツのほのかな味がする柿の種が好きなんだと思う」
「じゃあきっとそれ、ピーナッツが好きなんだよ」
「いやそれはない」
「食べてみ! ほら。めっちゃおいしいから!」
ゆず子はそう言って、俺の口元に無理矢理ピーナッツを運ぶ。めっちゃがさつだ。
そのせいで、いきおい余ってゆず子の指をくわえてしまった。
「あ」
ゆず子は、さっと手をひっこめた。
そして、顔を真っ赤にしてうつむきながら小さく叱るように言った。
「あほっ」
ん? なんだこれ? おかしいな?
すっごく、かわいくないか?
世界がいきなりくるっと変わったみたいだった。
俺は、何がこのみだったんだっけ。わからん。
口の中のピーナッツをかじりながら、つぶやいた。
「めっちゃ好きかも」
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