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(どうするーー?)
ブリサバは命を賭ける全裸の男の、一寸の曇りもない魂の叫びに一瞬、心を動かされる。
死なせるには惜しい男だと、ブリサバは感じたのだ。
しかし、揉め事にわざわざ首を突っ込むの得策ではない。
(ならば、せめて警告ぐらいはしておくか....。)
ブリサバはその無謀さを、見るに見かねてテケモンに耳打ちする。
「悪いことは言わない、命を粗末にするな。
これはイカサマだ....絶対に勝てないぞ?」
だが、テケモンは汚れなき微笑みと共に、ブリサバに礼を告げた。
「ご忠告痛み入る。
しかし、我は王故に勝負から逃げる訳には参りませぬ。」
「そうか....それなら好きにするがいい。
どうなっても知らんぞ?」
「何、心配には及ばぬよ。
余はこんな所で死ぬ訳にはいかぬのでな。
時に余の名はテケモン・ブランクと申す。
宜しければ、貴殿の名を教えては頂けぬか?」
「俺の名はブリサバ....ブリサバ・ソテイルだ。
もし、お前が言うように死ぬ運命になかったなら、事が済んだら飯でもどうだ?」
「ふむ....それは嬉しいお誘い痛み入る。
では、この野暮用が済んだら余が食事をご馳走いたそう。」
「そうか、そいつは楽しみだ。」
ブリサバはテケモンに、笑顔で答える。
それは明らかに、死に行く者に向けた言葉ではなかった。
ブリサバも心の何処かで、テケモンがこの局面を乗り切ると感じていたのである。
そして、運命の瞬間ーー。
テケモンは引き当てた聖王を、テーブルの上に置いた。
しかし、ディーラーの嫌らしい笑みを浮かべながら、テケモンに言う。
「ふひひ、俺の勝ちでさぁ客人。
じゃあ約束通り、その首とせっかくなんで、その股にぶら下げた稀なる巨剣、しっかりと回収させて頂きますぜ?」
ディーラーは、稀代の予言者セリをテーブルの上で見せつけながら、立ち上がる。
勝負は決した....しかし、テケモンはそんな窮地で動じる事なく、ディーラーに向けて言う。
「本当にそれで良いのか、我は命を賭けているのだぞ?
もし、本当にそれで良いというならば貴殿にも、命を賭けてもらわねばならなくなるが?」
「てめぇ....命乞いならまだしも、脅しだと!?
ふざけてんのか」
「ふざけているのは貴殿であろう。
その右袖に隠してるカードは、一体何だ?
正々堂々と勝負していたと申すなら、その袖口のモノも見せられる筈だが?」
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