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しかし、テケモンはそれを受け取るなり、この場に居る賭博で持ち金を失った者達に返金した。
「この者達はもう不正はしないだろう。
済まぬが、これでこの者達を勘弁してやってはくれぬか?」
「ありがてぇ、勘弁するも何も本当なら戻ってこなかった金だ。
聖王様、あんたがそう言うなら俺らはただ従うのみだよ。」
賭博場に来ていた者達は口々に、テケモンを賛嘆し礼を述べながら、賭博場を後にする。
「おい、本当に良かったのかテケモン?
路銀不足だから、ここに来たんだろ?」
「確かにそうだが、余よりもここの者達の方が生活は苦しい筈。
ならば余は王の中の王として、少しでも人々の幸せを為に力を尽くすのが、使命であり責務であろう。」
「そうか....お前が、それで良いなら別に構わんさ。
しかし、そうなると仕事が必要だな?
この状況では最早、賭博では稼げんからな。」
「ブリサバ殿、迷惑をかけて申し訳ない。」
テケモンは心底、申し訳なさそうにブリサバに向けて深々と頭を下げた。
「いや、別に頭を下げる必要はない。
それに賭博で稼ぐのは元来、俺の性には合わないからな?」
「いや、そうはいかぬ!
ブリサバ殿には命を救って頂いた借りがあるからな?」
「そんなものは忘れろ、あんなものは借りとは言わん。
別に俺がイカサマを暴かなくても、お前は一人で切り抜けられただろうからな?」
ブリサバはやや面倒くさそうに、テケモンへと告げる。
だが、ブリサバがテケモンへと言葉を発した直後ーー。
不意に二人の会話に乱入してきた人物が一人。
奇妙な色香を漂わす黒髪の男、ギャルソン・パコルスである。
「お金にお困りのようだね、そこのお二人さん?
丁度、貴方らのような腕利きの剣士向けの割りの良い仕事があるんだけど、飯でも喰いながら話しでもどうかな?」
「うむ、話しを聞こうか。」
ブリサバの返答を待たぬまま、テケモンはギャルソンへと即答した。
ーーーーーー
「やれやれ、全く....お前は人を疑うという事を知らないのか?」
ブリサバは溜め息をつきながら、テケモンに言う。
「いやいや、ブリサバ殿。
彼は怪しい者では、あるまいよ。」
「根拠はあるのか?」
「我の勘が、そう告げているのだよブリサバ殿
それが根拠だ。」
「当てになるのか、その勘とやらは?」
ブリサバはテケモンの言葉に再び、溜め息をついた。
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